台風18号接近時の降雨量と河川水位の関係についての考察
9月の三連休を直撃した台風18号。全国各地で様々な爪痕を残していきました。日本の本土4島(九州・四国・本州・北海道)すべてに上陸したのは史上初だそうです。
出典:気象庁ホームページ
今回は、台風18号接近時の降雨量と河川水位の関係を少しご紹介したいと思います。実は私たちが設置した水位センサーで測定した水位をグラフ化し、リアルタイムで確認できるシステムがもう既に稼働中です。
以下に示すグラフは、9月17日12:00から9月18日12:00まで、24時間分の八王子市内降雨量(上段)と長沼地区の河川水量(下段)です。それぞれグラフが上に上がるほど、雨量が多い、水位が高いということになります。
まずは降雨量(上段)のグラフから。二回強い雨が降ったことが読み取れます。 一つは、最も高いグラフ。台風が関東へ最接近していた頃の17日19:40、わずか5分程度の間に一時間当たり53mmという「非常に激しい雨」が降っていました。もう一つは、先程のピークの右側。こちらは台風の吹き返しでしょうか、18日00:30に一時間当たり37mmの「激しい雨」が降っていました。
では、降雨量のピークに合わせて河川の水位(下段)に着目してみます。 水位を計測している長沼地区の河川ですが、普段は水位2cm程度ととても穏やかな河川なのですが、16日午後から断続的に降っていた雨のせいで水量が増していました。それでも15cm程度です。 そこへ最初のピークである「非常に激しい雨」が降り水位が上昇、雨が降った30分後に水位が約30cmとなり15cm増えました。 その後雨は止んで水位は緩やかに下がり、7cmほどになった頃に二回目のピークである「激しい雨」が降り水位が急上昇、こちらも雨が降ってから30分後に水位が約75cmと、短時間に68cmも急上昇しました。これは靴が濡れる程度の高さが30分後には腰の高さになるという大きな変化です。
さて、以上のデータから、次の二点の気づきを得られました。
1)雨のピークと水位のピークには、30分のタイムラグがある
つまり雨が降ったからといって水位が即上昇するという訳ではない、という事です。これは上に示したグラフ以外の時間でも同じ傾向が見受けられたので、観測している長沼地区のポイントではまず間違いなさそうです。
2)短期的な雨量と水位は、必ずしも一致しない
これはとても興味深い事ですが、17日に降った雨量は非常に多かったにもかかわらず少ししか水位は上がらず、その5時間後に降った雨は先程より雨量が少ないのに水位が大きく上昇していました。 これは何故でしょうか? 推測するに、土壌の水分量が影響しているかもしれません。雨自体は16日夜から断続的に降っていました。山などは雨をある程度吸収し水を蓄えますが、17日の激しい雨で飽和してしまい、結果として次の激しい雨を吸収しきれず水位が急上昇した可能性があります。 この推測を裏付けるかのように、台風が過ぎた後の23日明け方頃、水位が急上昇した時と同じくらいの激しい雨が降ったのですが、水位はそれほど上がりませんでした。下のグラフは、左のピークが台風が接近した18日、右のピークが23日明け方の降雨量と水位のグラフです。雨量のピークは同じくらいなのですが、河川の水位は大きく違っていることが読み取れます。
このように、一つの河川、一つのポイントを計測するだけでも、色々な発見や驚きがあります。
これからも水位センサーの設置を進め、多くの河川の水位を計測そして分析することで、皆さまの安心に繋がるよう努めてまいります。